メイントピック

浜名湖遊覧船の灯は消えず

~観光地の未来を繋ぐ価値ある船出~

浜名湖遊覧船株式会社
代表取締役社長 小野晃司

浜松情報
2019年10月号

静岡県三島市に本社を置く伊豆箱根鉄道の子会社、浜名湖遊覧船(株)は、同社が運営する浜名湖の遊覧船事業からこの11月で撤退することを発表したのが今年5月。これで40年間にわたり浜名湖唯一の定期航路便として舘山寺温泉やフラワーパーク、奥浜名湖を結んでいた船が消えることが前提となった。その一方で、同事業の継承企業を模索していた浜名湖遊覧船は、地元でホテル、飲食業を手掛けるサゴーグループ(サゴーエンタプライズ、本社:浜松市中区、小野晃司社長)と存続を前提に折衝。両者の浅からぬ縁と、浜名湖の貴重な観光資源を残したいという思いが一致し、この10月1日より新たな船出をきることが決定。折しも、浜松モザイカルチャー世界博で湧く浜名湖に、花を添えてくれた。その経緯、意気込みを小野社長にお伺いした。

【水を感じる貴重な素材:地域にも重要な事業】

 

◆浜名湖遊覧船の事業を継承されましたが、いきさつを教えて下さい。

 
◇じつは当社が舘山寺で運営しているサゴーロイヤルホテルの建っている場所は、その昔、浜名湖遊覧船の親会社であった伊豆箱根鉄道が所有していたバンガローとして事業を行っていた土地なんです。そこを当社が譲り受け、現在に至っていまして、浅からぬご縁が根底にありました。それとは別に、伊豆箱根鉄道は11月一杯で浜名湖遊覧船の事業を辞めることを決めて、事業継承先を模索される中、地元の観光事業と連携できる会社にという考えを持っておられたという事も、ひとつのきっかけになりました。
 

◆浜松市民としても地元の会社が継承していただいたことに感謝したいですね。

 
◇観光に興味が無くて、船の事業だけを…という事業者では地域とうまくやっていけません。立地的にも立場的にも我々が受けることで円滑に、観光地の振興に繋がるなら価値があると判断しました。
 

◆浜名湖遊覧船にはどのような価値観を持っていますか?

 
◇私は舘山寺温泉の街づくり協議会会長をやっていますが訪れた方には「浜名湖」「舘山寺」「温泉」という3つを体感して欲しいと言っています。その中には、天然トラフグほか海産物をブランド化した売り込みや、風光明媚な景色を生かした「フィルムコミッション」でテレビや映画の撮影を誘致したり、また、お寺として歴史的な価値のある舘山寺もアピールしています。これらの魅力づくりで「浜名湖に行ってみたい」と思って戴けるような動機付けをするのですが、来て戴いてから何があるか?という点で、体験的なものを幾つ作れるかが求められています。その一つがこの遊覧船に乗って戴くことだと考えています。というのも、舘山寺には水を体感できるものが意外と少ないので、来てからの満足度を高める素材にはなりうると考えています。
 

◆地域活性を考えてもらえるとういのが地元企業に委ねる大きなメリットですね。

 
◇確かに、今まで観光協会との連動した企画などもありましたが、本社が三島市にあったことで意志の疎通に時間がかかったりしました。しかし地域の事がわかっている地元の会社が運営すれば決断は早いし、その効果なども的確に判断することができます。
 

◆自社としては今後どのような活用を考えていましたか?

 
◇250人乗りの船が2隻あるので、今はこれを活用するわけですが、将来的には小型化した方が効率はいいと思います。小型化すれば定期航路以外に目的型の利用ができます。現状の観光遊覧船という発想だと、舘山寺温泉のみが対象になってしまいますが、人を運ぶ水上バスという考え方なら、例えば奥浜名湖の宿泊施設に来られた方やマンションを持っている人も水上交通を利用してパルパルや動物園、フラワーパークに送迎することができます。
 

◆舘山寺に来た方だけが対象ではないと?

 
◇そうです。浜名湖観光圏という考え方で、鷲津を起点に三河地区や湖西市に来られた方を観光資源が集中している舘山寺に来ていただいたり。今はレークサイドウェイを始め、道路網が完備されてどこにても行けますが、こうした水上交通をアクセスの一部に組み込めば、旅の楽しさにも繋がるはずです。他の観光地では味わえない感動体験になると考えます。
 

◆社名変更は?

 
◇しません。浜名湖遊覧船なんてすごくいい社名ですよ。気に入っています。
 

◆船舶のデザイン変更は?

 
◇今は考えていません。会計年度が3月いっぱいなので、今期中は引き継いだ形ですすめていって、来期に向けて航路や就航時間などを経験に基づいた判断で検討していくということでしょうか。
 
 

【地域にも重要な事業】

 

◆舘山寺温泉はいま、過去の財産を活かしつつ、新しいことに挑戦していますよね。この船舶事業もそうしたものの起爆剤になるのではないでしょうか?

 
◇人間は新しいものが好きですから、新しいものには敵いません。でも何も無いところから遊覧船事業を立ち上げるとしたら、莫大な費用もかかってしまい、地域の一企業ではできません。それを引き継ぐことで新たな取り組みができるなら、それを活かさない手はないでしょう。
 

◆乗務員他、スタッフの方も引き継がれたのですね?どのような話をされましたか?

 
◇引き継いだスタッフは12名ですが、事業を継承したからといって、上から押しつけるつもりはありません。今までやってきたやり方も大切ですし、その人達の気持ちや考えで観光というものを考え、それが根付いたときに初めて船の事業って変えられるんじゃないかと考えています。いろいろ会話して、一緒に変えていくという事が大切だと思っています。
 

◆本当の意味でのサービス業への転換ですね?

 
◇浜名湖を安全運転で回るだけでなく、乗った方が如何に楽しみ、満足してくれるかを考えるおもてなし度の高い遊覧船になれたら、今後も存続していけるのではないでしょうか。
 

◆自社での活用も大切ですが、また、今後、この地域を守っていく人にとって、今回の事業継承は意義深いものですね。

 
◇そうですね。この浜名湖遊覧船をやるということの意義は地域にとっても非常に大きなものだと思います。この観光地は過去にも良い時代があって、それは先輩方が頑張ってきた足跡だと思います。しかし、時代の流れ、お客様の志向の変化で、もう一度地域をつくり直さなければならない今、我々、若い世代が何を目標に旅館業をやって行くのかを真剣に考えなければならないと思うのです。そうした中で、この遊覧船事業を誰かが受けなければ廃止になり、一つの重要な観光資源が消えることになったわけで、ここは何としても継承して、地域の将来に向けた活性の素材にしなければいけないと考えました。こうしたものが次の世代の地域づくりに役立つなら、リスクを負う意義もあるはずです。
 

◆県外事業者や儲け主義だけの企業に継承されても問題は残ったでしょうし。

 
◇そうですね。うちの会社がやるのが地域にとっても一番ニュートラルで良かったのではないでしょうか。
 

◆浜名湖に訪れる人の満足度が上がるよう、充実した運営をお願いします。

 
◇期待に添えられるよう頑張ります。

小野晃司

1966年浜松市出身。浜松北高、筑波大学卒業。1994年、米国ホフストラ大学大学院にてMBA取得。2004年サゴーエンタプライズ株式会社代表取締役社長就任。2009年、浜名湖遊覧船株式会社を完全子会社化。

以上

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