新春特別インタビュー

水上交通を観光の核に
浜名湖の魅力を社会起業家として再興する

サゴーエンタプライズ
社長 小野晃司

( 浜松情報 )
2016年2月号

コロナ禍で多大な影響を受ける観光業。インバウンド効果も期待できず先が見通せない中、多様な観光ビジネスを展開する観点から浜名湖地域の観光業の展望を聞いた。

■■ 浜名湖周辺の魅力を再興。浜松の観光は今年が勝負 ■■

 

◆先日、新しい遊覧船を導入されましたね。

 
そうですね。自転車20台以上を運べる水上タクシーとも言える「ウクレレ」です。浜名湖サービスエリアから出航する社会実験も行いました。
 

 

◆これはかなり大きな船なのでしょうか?

 
そんなに大きくはありません。19トン以下の小型船舶で82名乗りです。水の上から浜名湖の美しさを体感しながら、サイクリングなどを楽しむ「アクティブクルーズ」の定着を目的に、浜名湖に来て頂きたいという願いを込めて導入しました。今、サイクリストが世界的に増えていますし、ノルディックウォークやランニングなどをされる方も引き続き多いです。元々浜名湖はマリンスポーツが盛んですので、そういったアウトドア派の方々にも喜んで頂けるのではないでしょうか。
 

 

◆これで所有する船は何隻となりますか?

 
3隻目ですね。250名乗り、150名乗りに続いて、それぞれの特色を生かした船舶が揃いました。
 

 

◆カラーリングも鮮やかな黄色ですね。

 
ありがとうございます。アメリカのボストンやシカゴなどで使われている「水上タクシー」をイメージしました。願わくば「観光タクシー」として気軽に乗って欲しいと思います。日本でも、水上交通は少しずつ根付いてきましたね。この船舶は、いまは整備中ですので、春以降から夏に向けて稼働させる計画で準備を進めています。
 

 

◆浜名湖は観光資源をあまり有効に使われていないという声もありますが。

 
日本国内で「観光圏」が13地域認定されていますが、浜松市と湖西市にまたがっている「浜名湖観光圏」の推進事業を官・民・産・学の4つのセクターをフル活用して、経済圏として観光的側面から整備しようという動きが始まりました。「地方創生」が叫ばれる中、その鍵を握るのが観光事業だと思います。
 

◆インバウンド客の増加が大きな話題となっていますが、浜松への影響はどうなのでしょう?

 
統計的には全国でも数本の指に入るくらいに訪日外国人の宿泊者数は多いそうです。しかし、東京と大阪の間にあるという地の利にあやかった宿泊利用のみが目立ち、食事は朝食のみで、夜着、朝発という動きが多いのが現実ですね。
 

◆いわゆる東京、大阪間を結ぶ「ゴールデンルート」の中間であるのが浜松ですね。

 
私共のホテルでも影響はありましたが、今、やろうとしているのは、既に日本のメジャーな観光地を回った訪日外国人の旅行者が「2回目、3回目にどういう所に何しに行くのか」に注目する事で、これに対して「浜名湖が観光圏としてどう対応していくか」がチャンスでもあり大きな課題でもあります。こういった流れは、地方創生を含めた観光を切り口とした経済の活性化にも繋がると思います。
 

◆浜名湖観光圏は、13カ所ある観光圏の中でも期待は大きいのでしょうか?

 
「海の湖」というテーマを掲げていますが、浜名湖は海水と淡水が混ざる汽水湖という珍しい性質を持った観光資源として期待できます。同じ浜名湖でも、観光圏を軸に浜松側と湖西側で統一感を持って活動が出来ることも、過去とは異なるアプローチで実務的なメリットもあります。また、奥浜名湖地域は来年のNHK大河ドラマ「おんな城主直虎」にちなんだ観光地として、今年以降ブレイクする可能性を持っていると思います。
 

◆目標とするものはあるのでしょうか?

 
持続可能な観光地域づくりを目指すことです。いろいろな実験事業を進めていく中で、成果があったものを自分達の力で継続してやっていけるようなものにしていこう、というのが基本的なスタンスです。
 

◆期待できる計画ですね。

 
浜松には、他地域と比べると羨ましがられる程の観光資源が揃っているのです。これを浜松の人は当たり前と思うことが多く、どう生かすかというアイデアに乏しい部分があると思います。ないものねだりより、あるものさがし。現在ある観光資源をどう結びつけて訴求できる体制づくりが浜名湖観光圏の使命だと思います。
 

◆そのような遊覧船事業は非常に地域の観光に貢献していますね。

 
浜名湖の観光地としてのウィークポイントは、行きづらさだと思います。電車でJR浜松駅に降り立って浜名湖に向かうと、時間やお金が掛かります。これを解決するために「アクセスイノベーション」を起こしたいと、2009年に浜名湖遊覧船を引き継ぐ前から考えています。
 

 

◆アクセスイノベーションに関して詳しく教えて下さい。

 
浜名湖サービスエリアには高速バスの停留所があり、東京や名古屋から比較的安く来られます。そこから水上交通で舘山寺や周辺観光地へ人を運ぶ構想です。船で5分程で舘山寺温泉に到着できます。
 

 

◆元々、浜名湖では舟運交通が活用されてきたのでしょうか?

 
明治時代から浜名湖巡航船という会社があり、三ヶ日や気賀など奥浜名湖地域では重要な交通インフラとして使われてきました。その後、観光事業へ移行していった歴史があります。
 

 

◆ルーツとしては歴史が深いのですね。

 
当社としては「原点回帰」というイメージです。浜名湖では複数の橋をくぐる航路体験ができ、全国的にも非常に珍しいと注目しています。
 

◆社長が目指していく経営者像とは?

 
イメージとしては「社会起業家」です。社会の課題を事業で解決し、社会に貢献しながら収益性も追求する。決して一過性ではなく、継続する事業として育てていきたいですね。
 

 

◆具体的に、どの様な観光地を目指していきますか?

 
滞在型の観光コンテンツをプログラムとして開発し、「住んでよし、訪れてよし」の地域づくりを進めたいと思います。
 

◆今年はどんな一年になると思いますか?

 
井伊直虎を軸に、行政と民間が連携し、観光従事者が一体となってお客様を迎える年になると思います。大河ドラマ終了後も継続的に観光地として存在し続ける覚悟です。
 

 
本日はありがとうございました。2016年の更なるご活躍を期待しています。

小野晃司

1966年浜松市出身。浜松北高、筑波大学卒業。1994年、米国ホフストラ大学大学院にてMBA取得。2004年サゴーエンタプライズ株式会社代表取締役社長就任。2009年、浜名湖遊覧船株式会社を完全子会社化。

以上

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