創立75周年記念

これまでは、これからのため。

ー 変革の25年と再興へ向かう次の25年 ー

(サゴーグループ代表 小野晃司)
2026/01/01

Ⅰ.創立75周年を迎えて ― 原点と感謝

 
サゴーエンタプライズ株式会社は、1950年4月26日の創立以来、75年の歩みを重ねてまいりました。この節目を迎えることができましたのは、創立以来、会社を支えてくださった先人の努力、地域社会やお取引先の皆さま、そして日々現場で奮闘する従業員一人ひとりの力があってこそです。ここにあらためて、深い感謝と敬意を表します。
 
当社の歩みは、戦後の浜松に「明るさと豊かさを届ける」という創立理念とともに始まりました。物資が乏しく娯楽が限られた時代に、地域の生活文化を豊かにすることを使命に掲げ、宿泊・飲食・観光・流通など多岐にわたる事業を展開してきました。

Ⅱ.成長と変動の時代 ― 経営環境の変化と問い

 
高度経済成長期には、団体旅行ブームを背景に宿泊・宴会施設が観光事業の中核を担い、若者向けのファッション流通事業も大きく成長しました。その前後には、オイルショック、バブル崩壊、リーマンショック、東日本大震災、そしてコロナ禍と、経営環境を揺さぶる大きな変動が幾度も訪れましたが、“地域に必要とされる存在”であり続けるために、多様な事業を展開してまいりました。
 
しかし、日本社会が人口減少・自然災害・地政学的リスクという三つの構造課題に直面する中で、宿泊・飲食・船舶といった労働集約型装置産業は影響を受けやすく、需要減少と人材確保難、老朽化した施設の再投資など複合的な負荷は高まりました。私はその変化を前に、常に「このビジネスモデルは10年後でも通用するのか」と自問してきました。
 
人口動態の変化は、顧客の減少だけでなく、働き手の減少という二重の影響を与えます。そこに自然災害や地政学的リスクといった外部ショックが重なれば、企業を支える土台そのものが揺らぎます。規模拡大を続けるのか、あるいは未来のために構造を見直すのか──判断は決して容易ではありませんでした。

Ⅲ.選択と集中 ― 縮小均衡から維持均衡へ

 
順調に拡大を続けていた一方で、事業ポートフォリオは次第に偏りを見せ、老朽化対策や再投資の負担は増大していました。人口動態に基づく投資回収の困難性を考えれば、早晩企業全体が苦境に陥ることは明白でした。この構造的課題に備えるため、当社は事業の「選択と集中」と資産の再配置、すなわち「縮小均衡」に舵を切りました。
 
浜松モールプラザ・サゴー跡地の駐車場化、浜松サゴーインのアパホテル〈浜松駅南〉へのFC転換、浜松サゴーターミナルホテルとサゴー浪漫舘の賃貸解消、さらには資本金の減少などは、その象徴的な取り組みとなります。
 
そして2024年、創立以来の主要観光事業を譲渡するという大きな決断に至りました。これは事業の終止符ではなく、企業を未来へ残すための構造対応であり、次の25年へ進むための重要な転換でした。これらの計画的な実行により、当社は「維持均衡」と呼べる安定段階へ移行しています。
 
経営者はしばしば売上高や従業員数、店舗数といった“規模”で評価されます。しかし私が選んだのはその逆であり、縮小や撤退を伴う道でした。反省すべき点は多く、胸を張ってすべてを語れるわけではありません。しかし、後悔はありません。なぜなら、社業を未来へ確実に残すという使命から逃れることはできないからです。外部環境を冷静に見極め、必要な判断を積み重ねることこそ、経営者に求められる資質だと考えています。

Ⅳ.事業の再定義 ― ソリューション・プロバイダーへの進化

 
ここで「マーケティング・マイオピア」と呼ばれる「近視眼的経営」を紹介したいと思います。これは企業が自らの事業を狭く定義しすぎることで、変化への適応力を失う状態を指します。たとえば映画館を「来場してもらう場所」と捉えるのではなく、“映画を見るという体験そのものを提供する事業”と再定義していれば、インターネット時代の映画配信という大きな変化の中でも、場所に依存しない新たな提供モデルを構築できたかもしれません。形式にとらわれず、本質的な価値に立ち返ることの重要性を示す事例です。同じことはサゴーグループにも当てはまります。
 
当社はこれまで、さまざまなサービスを提供する「サービス・プロバイダー」として、観光資源や体験価値を創出する「コンテンツ・プロバイダー」の役割を担ってきました。しかし今後は、構造課題に対応するためにも「ソリューション・プロバイダー」へと進化していく必要があります。
 
その基盤となるのが、当社が縮小均衡の中で培ってきた知見を体系化し、「業務支援化」「業務最適化」「地域資源化」の視点からグループ運営を再定義する取り組みである「サゴーエコシステム経営」です。この再定義の実行主体を、子会社のサゴービルサービス株式会社が担っております。現場実務・運営改善・業務設計を一体的に推進することで、「人に依存しない事業構造」と「再現性の高い運営技術」を、グループ共通の資産として磨いてまいります。
 
では、その先にどのような未来を描くのか。国内では需要が確実に存在する福祉事業、海外では人口ボーナスを背景に成長を続ける協業地域との連携を視野に入れています。無理な拡大ではなく、人口市場性に基づく堅実な挑戦として位置づけており、特に福祉領域はホスピタリティやウェルネスと親和性の高い分野として準備を進めてまいります。これらは100年企業を見据えた現実的な選択肢です。

Ⅴ.黎明期から再興期へ ― 次の25年に向けて

 
縮小均衡と維持均衡を経たいま、私たちは今日の段階を「黎明期」と捉えています。夜明け前が最も暗いように、変化のただ中にある時期こそ、新しい一日へ向かう重要な時間です。創立75周年を迎えたいま、私たちは過去の歩みに敬意を払い、新しいサゴーを創造する次の25年間を「再興期」として歩み始めました。
 
経営理念「わが社は顧客に喜ばれる仕事を通じて社会に貢献し併せて社業の永続的発展と社員の生活向上を期す」を忘れることなく、株主、従業員、顧客、取引先、地域社会──五つのステークホルダーの皆さまとともに、100年企業へと続く確かな道筋を築いてまいります。
 
最後になりますが、私は経営者の家に生まれ、幼い頃からこの会社の営みを間近に見て育ちました。創立の礎を築いた先代の努力と覚悟に深い感謝と敬意を抱くとともに、その志を損なうことなく次の世代へ確かに継承し、さらに飛躍できる基盤を整えることをここに固く誓います。過去を誇りとし、未来を責任として受けとめ、これからも歩みを止めることなく、サゴーグループの新たな歴史を刻んでまいります。
 
これまで当社を支えてくださったすべての皆さまに、あらためて心より感謝申し上げます。皆さまのご健勝とご発展をお祈りするとともに、今後とも変わらぬご支援を賜りますようお願い申し上げます。

以上

サゴーエコシステム経営

サゴーエコシステム経営

 サゴーエコシステム経営は、「理解 → 実現 → 未来」という大きな環(サイクル)を通じて組織が持続的に成長していくことを示す経営モデルです。この大きな環は会社全体が進む方向性を示し、社員一人ひとりの仕事によって支えられています。
 まず「理解の環」では、資源・環境・判断という三つの視点から現状を把握し、何を行い、何を行わないかを判断することで、何ができるのかを見極めます。これは会社の過去や現在を学び、未来をつくるための基盤を整えるプロセスです。
 次に「実現の環」では、準備・行動・確認という小さな環が日々回り続けます。これは現場で働くすべての社員が直接担う領域であり、毎日の小さな積み重ねが会社の大きな環を前に進める原動力となります。図において “ 実現 “ の部分だけが「丸」で描かれているのは、仕事が継続的に循環する性質を象徴しているためです。
 最後に「未来の環」では、動機・目的・目標を相互に見直しながら、関わる人や地域とともに、会社がどこへ向かうのかを定めます。未来の環は組織を鼓舞し、進むべき道を照らす“灯台”の役割を果たします。
 このように、大きな環(理解 → 実現 → 未来)と、3つの小さな環は互いに連動そして循環しています。「理解」の精度が高まり、社員スタッフ一人ひとりの「実現」の数が増えると、大きな環はより力強く回転し、サゴーグループは「未来」へ向かって前進していくのです。
 これが、サゴーエコシステム経営の本質です。